お家に帰ろう。
その日の明と市川は、あてもなく街をさまよっていた。


なんとなく入ったファーストフード店で、
二人分のドリンクのオーダーを済ませた市川が、財布を覗き込みながらボソッと言った。


「そうだ。餌代とっとかなきゃ。」

「何の餌?」

「魚」

「…ニモ?」

「アロワナって知ってる?」

「聞いたことある。」

「コイツがさ、生餌喰うんだよ。」

「…おっきいの?」

「40センチくらいあるかな?まだデカくなるよ。」

「ひえー。」

「…観る?」

「観る。」


ひょんなことから、市川の家へと向かうことになった。


市川の家は、タワーマンションの最上階のため、


「耳が痛い。」

「俺もまだ慣れてないから。」


エレベーターでの空間が、すでにたどたどしい。


案内されたリビングは、
やたらと広く、
窓から見える景色も、遮るものが何一つないため、外に居るのと同じくらい明るく、解放感すらおぼえた。


その壁に沿って、横長な水槽が置かれていて、

「これ?」

吸い寄せられるように近づく明。


主とも思える、その一匹の魚は、不思議なオーラを放っていた。
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