お家に帰ろう。
はじめて、市川本人の口から、
自分の存在の必要性を感じる言葉が聞けた気がした明だった。


「…っと…まぁ、そんなに急いで帰ることもないんだけどぉ。」

「じゃあイーじゃん。」

「うん。まぁ。」


すると市川は、
ガラス窓に向かって歩きだし、

「来てみ!ほら、アレ!何か分かる?」

「え?どれ?」


明はその隣に並んだ。


「しかしスゴいね。こんなところに住んでんだもんね。」

「たまに、鳥が下を飛んでるよ。」

「あはは、ウケるぅ!」

「鳥からしたら迷惑な話だよなぁ。」

「ていうか、あの魚、どんだけ高い場所で泳いでんのって話だよね!」

「…面白いこと考えるなぁ。」

「そ?」

「うん。そんなこと考えたことなかったよ俺。」

「誉められてるみたいで、なんか嬉しいなぁ。」

「ははは、すごいすごい。」

「わーい。」

「…かわいいなぁ。」

「!なに、突然…」

「突然じゃないよ。哲司の写メ見たときから思ってたことだよ。」

「そーじゃなくて…そんな、面と向かって…」

「ここなら誰も聞いてないから。」

「あの子は?」


明はアロワナを指差した。

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