お家に帰ろう。
「この前は部屋に来なかったもんなぁ。」


遥の部屋を見渡しながら吉岡は言った。


「そーだったね!…だいたい、この部屋に入ってきた男は、家族以外にテツぐらいだから。」

「コテッちゃんかぁ。」

「なに?」

「なんでもない。」

「?変なのぉ。」

「…彼は、上條シスターズの恋愛事情に悪い影響与えないわけ?幼なじみを理由に、何でも許されてるってゆーか…なんでこの部屋に入ってくるんだよ?」

「なんでって…もう、ずっと前のことだもん、忘れたよ。」

「アイツのあの“何でも知ってる”みたいな態度…俺、あんまり好きじゃないんだよな〜。」

「あはは。テツは明の幼なじみだよ〜。」

「そーだけどさぁ。あ!俺、嫉妬してんのかも。」


そう言って遥に歩み寄ると、後ろから肩を抱き、

(これ、上手くいったんじゃね?)

と思う吉岡だったが、


「そうだ!」

なんなく、その腕を解き、

「アルバム見る?」

と、無邪気に尋ねては、
アルバムを取りに向かう遥。


ため息まじりに首をかしげ、
ベッドにボムッと座り込む吉岡は、

「はいはい。ま、お約束だよな。」と、

焦らしてるのか?
解ってないのか?
はたまた、
そーなることを避けているのか?

それすら分からない、遥の初恋物語に、
そろそろ、痺れをきらしはじめていた。

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