お家に帰ろう。
「べつにぃ。」

明が答え、

二人分の茶碗を持ってきた将人が口を挟む。


「この二人は、ある男をきっかけに、一段と親密なんだよ。」


「ん?ある男?誰だ?」

そこには、さすがの父親もひっかかり、

「市川くんでしょ?、ほら、明の。…てっちゃんの紹介だものね!」

丸くおさめるのも母親だった。


そして、

「変なの!明の恋愛話に周りが大騒ぎしちゃって。そーでもしないと男とつきあえないの?」

「遥!やめなさい、そんな言い方!」


注意もする母に遥が口を尖らせると、
そんな様子を見ていた哲司が言った。


「なんだよ遥〜。うまくいってる人は、さすが落ち着いてるじゃん!」

すると、

「やめてよねーテツ。」


口ではそう言っていても、万更でもなさそうな表情を見せる遥。


哲司のそんなトコロが、
明も買っているトコロで、
上條家に受け入れられる、一番の要因なのだろう。



「テツ、ちょっと!」

食事が終わると、明は哲司を連れて部屋へと上がっていく。


そんな二人を見て、

「哲司くんじゃないのか…」

と、呟く父親の姿を、
見て見ぬフリをする将人だった。

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