お家に帰ろう。
次の日、哲司は
部活終わりの市川を捕まえて、
明の待つ、川沿いの舗装された土手へと向かっていた。


何も知らされてなかった市川は、
そこに明の姿があるのを見て、驚いた表情を浮かべている。


「ごめんね。こんな所に来てもらっちゃって。」


歩み寄りながら明が言うと、
哲司は、少しずつ後退して、
離れたところにあるベンチに腰掛けた。


よっぽど怒鳴らないかぎり、話し声など聞こえてこない距離で、
二人が向き合っている姿を、
できるだけ見ないよう努めた。



「何を言われるのか、だいたいわかる。」

「…」

「でも、理由がわからない。」

「…だよね。」

「なんでセックスしたの?」

「言ったでしょ。やってみないと解らないっ」

「ウソだ。」

「…そーなの。…多分、市川くんのことを好きなんだと思う。でも!…あたしには前から好きな人がいてね、やっぱり、その人の方が、もっと好きなの!」

「じゃあ、なんで!…なんで言わなかったの?」

「…ごめんなさい。」

「ヤバイ奴なのか?」

「そーゆーんじゃないの…」

「あ―――!!!」


市川は両手で頭をかきながら喚いてから言った。

「やだ!」

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