彼岸花の咲く頃に
その時。

「そこまでにしておかんか、女狐」

聞き慣れた声が、店の入り口の方から聞こえた。

「あ…」

凍りついたようだった表情が緩み、俺は笑顔を浮かべる。

「姫羅木さん、来てくれたんじゃね!」

「…おー」

スーパーの入り口に立つ姫羅木さんの頭頂部にも獣耳、そして尻には四本の尻尾が揺れていた。

「どうも品のない匂いが漂ってきてのぅ…気になって来てみればこの有り様じゃ」

そう言って、姫羅木さんは普段は見せないような怖い顔で、野狐を睨んだ。

「姫羅木さん、この狐は…」

「知っておる」

説明しようとした俺を制し、彼女は呟いた。

「悪狐(あっこ)じゃ」

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