丸腰デパート・イケメン保安課
「許せない…か…」
「許せる訳ないですよ!ひどすぎます!力で押さえ付けるなんて!傷付ける事なんて考えてないんだ!」

力んで叫ぶ笙の言葉に更科は笑い、頭を掻いた。

「こういう事は、茶飯事並に起こってんだよ。…こういう仕事してると慣れちまう…医者が人の死に慣れる様にな」
「俺は慣れたくない。傷付いていい人なんて、必要無い人なんていない。警察も、人を救う為に存在すると思う」
「…ヒューマニズムか」

うつむく笙の肩を叩き、更科は笑った。
更科もまた、刑事になった当時は今の笙と同じであったのだ。

「まぁ、いいや。今日の所は聞ける範囲で聴取するぞ」






少女の名は、米田香奈。
公立の高校に通う一年生。
襲われたのは部活の帰り道。

「何人だった?犯人の顔は覚えてる?」
笙の質問に、香奈はうつろな瞳を上げた。

「…一人……顔は…すぐには思い出せない…」
震える細い声で答え、香奈は毛布を深く被る。

「多分……若い人…高校生か大学生…くらい……」

香奈は顔を背け、溢れ出した涙を隠す様に鼻をすすった。

見ると手の甲にもアザがあり、手首にはくっきりと押さえ付けられた指跡が浮き出ていた。


「…ごめん」
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