臆病者の逃走劇
「アンタが好きだ」
彼はそう、率直に告げた。
たくさんの女子に囲まれながら、その女子を邪魔そうに押しのけて、一人で登校していたあたしの目の前に立ち塞がって。
戸惑って視線を泳がせる私をひたすらまっすぐと見つめて、そう告げた。
もちろん私は戸惑う。
だってかっこいいのに実は優しかったりする東条くんに、私は憧れていたけど、私たちに接点なんてなかったから。
私はただの平凡女子高生。
そんな私と学年の王子様である東条くんが関わったのなんて…たった、1度きりだ。
しかもその関わりだって、すごく浅いもの。