【短編】私vs国連~大怪獣の足元で~
「いいひと達で、良かったなぁ」

 展開するのとあまり変わらないスピードで、急速に撤収。

 そして去ってゆく国連軍に手を振って、そうつぶやくと。

 私に張り付くようにして、固唾を飲んでいた新聞屋が、おそるおそる聞いてきた。

「……えっと今……
 一体、何が起きたんでしょうか……?」

「……知りたいですか?」

 それはそうだろう。

 戦車や、落下傘部隊まで用意して私と怪獣を連れて行こうとしてたのに。

『乗り物酔いするから』っていう理由だけで、諦めるヤツは、軍人どころか、世間一般、民間人にだって、あまりいない。

 うんうん、とうなづく新聞屋に、私はピースサインを出した。

「私の研究が、実を結んだんです」

「……は?
 って、博士。
 あなたは一体、何の研究を……?」

「……ヒトの不平不満や、怒り。
 過剰な闘争心とかっていう、ネガティヴな感情を。
 思いやりや優しさとかって言う、ポジティヴな感情に変化させる研究です」

「……へ?」
 
 そんな間の抜けた声を出す新聞屋に、私は笑って説明をした。
 
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