【短編】私vs国連~大怪獣の足元で~
 私の言葉に、隊長は腕を組むと、うんうん、と頷いた。

「……ソレは、参りマシタね。
 ワタシも、子供のコロには、経験しマシタが。
 酔うと、食事ドコロか、水一滴サエ飲めず」

「そうなんですよ、その辛さを、判ってくださいますか?」

「モチロンデス。
 ソウですか……しかも、我々が用意シテいる乗り物はタンカー船、なんデスよねぇ。
 国連本部に着くマデ、日数単位の時間がかかりマス。
 ソレに、乗り物酔いの酷い、博士をお連れスルのは、大変オ気の毒デス」

「そう、思うのなら是非。
 私たちをどこかに移動させようとは思わずにいて、いただけたら、助かるんですが……?」

 思わず子供みたいな、上目使いになって訴える、私の言葉に。

 国連軍の隊長は、心を動かさせたようだった。

 仕方がありませんね、とうなづくと。

 私たちをあきらめて、さっさと撤収準備に取り掛かってくれた。

 隊長の部下の中には、上の命令は絶対のはずでは? と。

 疑問の声がいくつか上がったようだったが。

 隊長が、私の乗り物酔いについて話をすると、全員。

 私の事を、気の毒がってくれて、誰も私と怪獣を連れて行こう、と言いだす者はいなくなった。
 
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