【短編】私vs国連~大怪獣の足元で~
「す、すみません~
 ウチの怪獣がとんだ粗相を……」

 平謝りに謝る私に、山田さんは、白い歯を見せてにかっ、と笑った。

「いいんです、いいんです。
 かわいいワンちゃんの愛情表現じゃ、ないですか。
 朝早く、とは言え夏ですし。
 一っ走りしているうちに、乾いてしまいますよ。
 では!」

 そう言って、山田さんは私の目の前から走り去る。

 いいひとだなぁ。

 アタマだけなのに、コレを『犬』って認識してくれて。

 しかも、頭から水をかけられたのに、怒らないなんて!

 彼は、相当な愛犬家に違いない。

 私は、消えてゆく山田さんの後ろ姿に、手を振ってから。

 怪獣を見上げて、めっ、と叱った。

「ダメだろう?
 そうでなくてもお前は、朝早くから吠えて、ヒト様にご迷惑をおかけしているのに!
 これ以上いたずらが過ぎたら、ここを出ていけって言われるぞ!」

 私は、両手を振りまわして、抗議すると。

 怪獣は、面目ない、とでも言うように身を伏せた。

 と、今度は幼い声が割って入って来た。


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