秘密の誘惑

ディーンが萌を抱きとめると、腕の中でほんの少し動いた。



「萌っ？萌！？」



ディーンは名前を呼んだが、萌の反応はなかった。



「呼び続けていてください　救急車が――あぁ　来ました」



サイレンを消した救急車がディーンたちの前で止った。



＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊



大学病院に運ばれた萌は精密検査を受けて今は特別室の病室のベッドで眠っていた。



萌を苦しめた胃痛は胃潰瘍がぶり返してしまったのだが、手術をしなくても済むようだ。



熱も点滴で下がり始めてディーンをホッとさせた。



運ばれて丸一日が経つがまだ萌は目覚めていない。



薬で眠らせているのだ。



そうする事が一番の回復につながると。



ディーンは早く萌と話をしたくてもどかしかったのだが。