【件名:ゴール裏にいます】
(サッカーの魅力って何?)
ここあさんの問いかけが頭の中に残っていた。
それは僕にもまだ良く分かっていない。
このスタジアムに集まった3万人以上の人達が夢中になっているサッカーの魅力。
サッカーって複雑そうに見えて、実は単純なスポーツだ。
オフサイドのルールは別にしておいて、一つのボールを奪い合い、そのボールを相手のゴールに入れる為に仲間達と協力し合う。
そこに反紳士的な行為があれば審判は試合を止め、罰を与える事が出来る。
サッカーを一言で説明するとこんな感じだ。
一つの目標を持って、それに向かって努力する。上手くいけば嬉しいだろうし、失敗すれば悔しいだろう。
サッカーを観る人の中には自分自身の事をサッカーに当て嵌(は)めて考える人もいるかも知れない。
自分の応援するチームが勝てば楽しい一日を過ごせ、負ければ暗い一日を過ごさなければいけなくなる。
サッカーによって自分の気持ちが浮いたり、沈んだり。
様々な思いがそこにはあるのだろうと思う。
上手く説明出来ているとは思わない。
だが、本当の事が知りたければスタジアムに足を運ぶのが一番の近道であろう事は間違いない。
「勇次くん!何ボーッとしてんの?もう後半始まっちゃってるよ!」
沙希ちゃんに言われてハッとした。
既に後半が始まって10分が経過しようとしているところだった。
天然芝のピッチ上ではトリニータの攻勢だ。
右サイドを11番の吉田が駆け上がり、左サイドの28番ルシアノからサイドチェンジのパスを胸でトラップして足元にボールを収めたところだった。
ゴールまでは約25m。
ここはミドルシュートの選択も考えられたが、吉田が選んだのはドリブルだった。
右コーナーポスト付近までドリブルで持ち込み、相手ディフェンダーを引き付ける。
そこでポッカリと開いたスペースに9番のベンチーニョが走り込む。
ベンチーニョの前にディフェンダーは一人もいなかった。
それを横目で確認した吉田はすかさずパスを出す。
フワリと浮かんだ絶妙なパスはベンチーニョの足元に落ち、ベンチーニョは一閃左足を振り抜いた。
これに反応したゴールキーパーは片手でボールを弾くと、ボールはポストに当たり跳ね返った。