【件名:ゴール裏にいます】
「ああ・・惜しい・・」
アルビレックスサポーターの悲鳴が安堵のため息に変わった。
瞬間――。
ゴール前に走り込んできた白いユニホームの選手が見えた。
背番号12の船越だ!
船越はゴールポストに当たって跳ね返ったボールを見ていた。
懸命にボールをクリアーしようとする相手ディフェンダーより先に頭から飛び込んで行く。
再びスタジアムを包んだ悲鳴と共にゴールのネットが大きく揺れた。
ゴールキーパーがボールを弾いてから2秒もなかっただろう。
『ゴーーーール!!!』
スタジアム中が静まる中、アウェーゴール裏の50人程のサポーターは喜びを爆発させた。
『船越!船越!船越!船越!船越!船越!船越!!』
マフラータオルを頭上で回し、跳びはねながら誰彼ともなくハイタッチを繰り返した。
しかしその喜びも長くはもたなかった。
船越がゴールを決めてから15分後に同点に追い付かれ、そのまま延長戦へと突入。
延長前半の終わり間際にVゴールを相手に決められ、トリニータは激戦を制する事が出来なかった。
100分以上を戦い抜いてゴール裏に挨拶に来た選手達を僕らは労いの拍手で迎えた。
「ばかやろー!わざわざ大分から来てんのに負けてんじゃないわよー!悔しいじゃないー!」
みんなが拍手をしている中、ピッチに向かって叫ぶ女の人の声がした。
「名山さん・・」
沙希ちゃんがポツリと言った言葉に彼女の横を見てみるとそこにここあさんが立っていた。
「ここあさん、いつからそこに?」
「さあ?気がついたらここにいたわ。あなた達全然気がつかないのね。しょうがないからずっと応援していたわよ」
「ここあさん・・」
「あー、スッキリしたぁ。さてと、ホテルに戻って宴会だわ」
「はい、そうしましょう」
ここあさんはそう言って階段を昇って行った。
「あれ誰?」
結樹さんが聞いてきた。
「僕の友達で名山さんて言います。サッカー観戦初めてだったんですよ」
「ゆ、勇次くん。いや、勇次さん。お願いだから紹介して・・」
「良いですけど、結樹さんて男性機能正常でしょうね?」
「はあ?」
「いや、何でもないです」