白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~




それが正しいのか間違っているのか俺自身にもわからないけど。





「どしたの?」



直が、俺の顔を覗き込む。


この顔、好き。


直が高校生だった頃、こうしてよく俺を心配してくれた。





彼女になるずっと前から。



俺が疲れているときに限って。





しかも“心”が疲れているとき。



他の誰も気付かない俺の変化を、直だけは気付いてくれていたんだよな。





「ん?昔を思い出してた」


「昔って?子供の頃?」




直は、洗い物を終え、エプロンを外す。




「違うよ。直が高校生だった頃のこと」



「え~!最近だよ、それ」



「そうか?」



戻りたいと思うことがあるんだと直はいつか話してくれた。


でも、戻ってしまうともしかしたら今の幸せが消えてしまうかもしれないねって。





俺も思うことがある。



1日だけでいい。


高校生の直に会いたいなって。




ホームルーム中に、俺のことを穴が開く程見つめていた矢沢直に……


会いたいな。







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