下心と、青春と


教室に入っても、黒板消しが落ちて来ることはなかった。


机にヒドい言葉が彫ってあることも、机の上に彼岸花が置いてあったりもしなかった。


というか彼岸花は季節じゃないか。


それに、机の中に入れっぱなしだった教科書も無傷だし、昨日持ってきた体操着も無傷だ。


椅子の上に画鋲もない(画鋲にこだわりすぎ?)。


「うん、大丈夫みたい」


「何がだ」


「えっ?あ、青野、くん……」


「何がだと聞いてるんだ」


「あ、いや、特に意味はなくて……」


私が安心して座ると、前に座っていた青野くんが私の方を向いてしゃべった。


こんな近くから、彼を見るのは初めてで、緊張してしまう。


もしかしたら、今の私の顔は、真っ赤かもしれない。



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