下心と、青春と
「じゃあ剣之助が守ってやれよ。オレは忙しいから無理」
「なんだその言い草は」
「はいはいお前の長い説教は聞きたくねーよ。おい、柚葉、明日からはもうちょい濃い味で作って来いよ」
「やだね!」
呆れたというような顔で、梨太郎は屋上からいなくなった。
残ったのは、私と剣之助くん。
とっても、気まずい。
「アイツ、悪い奴じゃないんだ。分かってくれな」
「……うん」
と言ったものの、もう考えても悪い奴だろと思ったことは、内緒だ。
「ちょっとスレちまってるだけで、根はいい奴、なはずだ」
「……うん」
幼なじみの剣之助くんが言うんだ、きっと根はいい奴なんだ。多分。
「それじゃ、オレは行くわ。アンタは?」
「私は、もう少しここにいる」
「分かった」
剣之助くんは、梨太郎を追いかけるように屋上を出た。