ツギハギの恋
もう少しだけ見ていたかった。



ひなたの残像が瞼の奥で揺れる。


忘れたくない。



離したくない。



消えていく残像に暗闇の中、必死にもがいた。


もがきながら手を伸ばし掴まったのはひなたの手で、ひなたの声だけがあたしを光に導く。




『大丈夫。また会えるよ……』



「お互いに忘れても?」




『会えばきっとわかるよ。だって俺は縫いぐるみの時からずっとミリちゃんに恋してたんだから』




その一言があたしの胸を締め付けて涙が溢れた。



「ありがとうひなた……」



『うん。ミリちゃんまたね……』




薄れ行く意識の中で繋いだ手が解かれるのがわかった。

そして次に目を覚ましたらなにもかも忘れてしまうことも。





バイバイひなた……。



また会う日まで。



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