【鬼短2.】鬼売り
「如何です?」
商人が、呆然としているお桐に尋ねました。
お桐は、微笑む商人をキッと睨みつけました。
「なんなのです、これは―…!!」
震える声でそう言うお桐に、商人はただただ穏やかに微笑みかけます。
「ですから、人の世の機微を知れる物と、申し上げました。」
お桐は、ぱっと鬼を投げ捨ててしまいました。鬼は土間に落ち、音もなく商人の足元に転がりました。
「嘘じゃ、まやかしじゃ、母上が…かようなことを…申される道理がない!!」
悲鳴のような声を上げて激しく首を振るお桐を横目に、商人は鬼を拾いあげながら静かに言います。
「確か、こちらの奥方様は、二番目の方だとか。
お嬢様は、亡くなられた前の奥方様の御子と伺いましたが?」
…確かに、商人の言う通りでございました。今の母は、お桐が5つの時に父が迎えた後妻でした。
以来、真の娘のように自分を可愛がってくれた母でしたが…
(母上は…いつもそのように、私を思っておられたの…?)
お桐の背筋を、冷たいものが昇っていきました。
へたりと座りこんだお桐は、力ない声で商人に尋ねました。
「……その、鬼は…なんなのです?」
商人は、鬼に付いた土を払いながら
それまでの微笑みとは違う、にぃ、と 不気味な笑みを浮かべて、お桐を見下ろしました。
「近しい者が貴女に抱く、真の声を聞ける物。
美しゅう見える世の、陰の闇を見られる物。
人の心をのぞける、実に便利な遠眼鏡でございます。
初めて御実家を出られ、外の世に触れられるお嬢様が、人の世の機微を学ぶに相応しき道具でございます。」
商人が、呆然としているお桐に尋ねました。
お桐は、微笑む商人をキッと睨みつけました。
「なんなのです、これは―…!!」
震える声でそう言うお桐に、商人はただただ穏やかに微笑みかけます。
「ですから、人の世の機微を知れる物と、申し上げました。」
お桐は、ぱっと鬼を投げ捨ててしまいました。鬼は土間に落ち、音もなく商人の足元に転がりました。
「嘘じゃ、まやかしじゃ、母上が…かようなことを…申される道理がない!!」
悲鳴のような声を上げて激しく首を振るお桐を横目に、商人は鬼を拾いあげながら静かに言います。
「確か、こちらの奥方様は、二番目の方だとか。
お嬢様は、亡くなられた前の奥方様の御子と伺いましたが?」
…確かに、商人の言う通りでございました。今の母は、お桐が5つの時に父が迎えた後妻でした。
以来、真の娘のように自分を可愛がってくれた母でしたが…
(母上は…いつもそのように、私を思っておられたの…?)
お桐の背筋を、冷たいものが昇っていきました。
へたりと座りこんだお桐は、力ない声で商人に尋ねました。
「……その、鬼は…なんなのです?」
商人は、鬼に付いた土を払いながら
それまでの微笑みとは違う、にぃ、と 不気味な笑みを浮かべて、お桐を見下ろしました。
「近しい者が貴女に抱く、真の声を聞ける物。
美しゅう見える世の、陰の闇を見られる物。
人の心をのぞける、実に便利な遠眼鏡でございます。
初めて御実家を出られ、外の世に触れられるお嬢様が、人の世の機微を学ぶに相応しき道具でございます。」