【鬼短2.】鬼売り
ずっと被ったままだった笠に、手をかけました。



「ああ…また破れてしまっている。

ですが、お嬢様のお陰で、新しいのを買えそうです。」




そう、言いながら
商人は、顎紐を解いて、


笠を脱ぎました。










「…あっ…!?」







その姿を見て、お桐は目を見開きました。



商人は、にぃ、と笑いながら



「角があると、笠がすぐ痛んで困る…」







額に生えた2本の角を撫でました。






そして

あんぐりと口を開けたままのお桐に微笑みかけ、



「では、ご機嫌よう。

鬼は、貴女が死ぬまで消えません。
いつも傍らに置いて可愛がって下さいませ。

どのように使われても、貴女の自由。
どうぞ良きように…」






そう 言ったかと思うと。














お桐が瞬きをした瞬間に

忽然と


商人の姿は消えてしまっていたのでした。



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