【鬼短2.】鬼売り
「お桐、お桐。
如何した、このような所に座りこんで。」
父の声がして、
ぼうっと土間を見つめていたお桐は、はっと我に返りました。
「おやまあ、見当たらないと思ったら…。どうしたのじゃ、お桐?」
母の声も聞こえます。
いつの間にか陽は傾き、皆が家に戻って来ていたのでした。
……優しい笑顔の裏で、自分を疎んじる継母。
……義を重んじよと弟達に訓じながら、藩の財を流し、謀叛を企む父。
お桐は、ゆっくりと振り向きました。
「お帰りなさいませ。父上、母上。」
いつもと変わらぬ、たおやかな笑みを浮かべて。