【鬼短2.】鬼売り

「お桐、お桐。

如何した、このような所に座りこんで。」




父の声がして、

ぼうっと土間を見つめていたお桐は、はっと我に返りました。




「おやまあ、見当たらないと思ったら…。どうしたのじゃ、お桐?」




母の声も聞こえます。





いつの間にか陽は傾き、皆が家に戻って来ていたのでした。








……優しい笑顔の裏で、自分を疎んじる継母。

……義を重んじよと弟達に訓じながら、藩の財を流し、謀叛を企む父。





お桐は、ゆっくりと振り向きました。










「お帰りなさいませ。父上、母上。」









いつもと変わらぬ、たおやかな笑みを浮かべて。











< 17 / 21 >

この作品をシェア

pagetop