スカーレット

 母に連れられ、奈津子が私の部屋に入ってきた。

 母は店のお通しを作るため、一階へ戻る。

 奈津子は写真で見るより小柄で、写真ではロングヘアーだったのがボブくらいまでカットしてあった。

 覚えのない友人に、何と挨拶をすればいい……?

「あの、初めまして。じゃ、ないけど……」

 私のセリフに何とも寂しそうな顔をする奈津子。

「紀子……」

 ふと笑みを浮かべてこう続けた。

「助かって良かった……」

 そんな顔しないでよ。

 なんだかじーんと胸に響き、泣きそうになった。

「ごめんなさい。あなたのことも、覚えてなくて」

「死ぬよりマシじゃない」

 そう言って彼女は私を抱きしめた。

 旧・紀子にとって、きっと大事な友達だったんだ……。

「あのね、奈津子さん」

「奈津子でいいのよ。友達なんだから」

「あ、うん。奈津子。あたしのこと、教えてほしいの」

 奈津子は頷いて、机に広げていたアルバムを手に取った。


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