スカーレット

 どこかに旅行に行った時のアルバムだ。

「これ、半年くらい前の写真なの。二人でスノボしに行ったのよ」

「そうだったんだ」

「二人とも初心者だから、滑りながら写真なんか撮れなくて。特に観光名所ってわけでもないから食べ物とか、ホテルとか、そんな写真ばっかりでしょ?」

 懐かしむように微笑む奈津子の表情は、どこか憂いを帯びている。

 たしかに滑っている間の写真はなく、どの地域に行ったかもわからないような写真ばかりだ。

 旅の写真にしては、センスがない。

「ねえ、あたしって、どんな人間だった?」

「写真を見ての通りよ。オシャレで……明るかった」

 アルバムを閉じた奈津子は、そのままカーペットの上に座る。

「過去形、だね」

 私の言葉に苦笑いを浮かべ、視線を落とした。

「色々あってね、体調とか良くないみたいだったから」

「色々って?」

 私が問うと、彼女も眉を下げて困ったような顔をした。

 私のことを聞くと、みんな同じような顔をする。

 
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