スカーレット

 夕食の後は勝彦に見守られながら食器を私が洗う。

「もう。一人でも大丈夫だってば」

 と言っても、絶対に私から目を離さない。

 目どころか体をも離さない。

 ずっと背中から私に抱き付いているのだ。

「わかってるよ。俺が離れたくないだけ」

 彼との生活は甘い愛の日々。

 べったりラブラブ。

 バカップル。

 こんなに彼に愛されて、旧・紀子のどこが不幸だったのか。

 手がかりは二つの処方箋の説明書のみ。

「かっちゃん。あたしが洗ってる間にお風呂入れてきて」

「えー?」

「入れてきてくれたら一緒に入る」

「マジ?」

 上機嫌で風呂のスイッチを入れに行った勝彦。

 彼が離れた背中に寂しさを感じると、隠し事をする罪悪感がズシリとのしかかってきた。


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