ヤバいくらいに溺れてる
愛される男と愛されない女
ベッドの上で、携帯が鳴った

あたしの前に座っていた陽向が、濡れている長い指先を見せるとにやりと笑った

「上田さんって人、到着したみたいだけど?」

「…っるさい」

「動ける?」

「…っるさいって言ってるでしょ!」

あたしは脱がされた服を引っ掴むと、陽向の顔に向けて投げた

あたしのスカートが陽向の頭の上に乗っかる

全裸のあたしは、赤いワンピースに手を伸ばして頭からかぶった

「おおっ、そんなんで行く気? 強気だねえ」

陽向が、面白そうに笑って濡れて光る指をぺろっと舌先で舐めた

「ちょ…汚いでしょ」

「どうかな?」

「何なのよ」

「さあ、何でしょうねえ」

「はあ?」

あたしは眉に力を入れると、なにを考えているさっぱりわからない陽向を見つめる

「行くなら、床、掃除していってよ。濡れたままって嫌だから」

「あ…あんたのせいでしょ!」

あたしは壁に手を当てて、よろよろと立ちあがった

下半身にまったく力が入らない

絨毯に染みができているのを見ると、頬が熱くなった

こんなくそガキに、何度も……って考えるだけ苛々するわ

「早く掃除してよ」

「うるさいっ!」

拭けばいいんでしょ、拭けば!

あったまに来るなあ

何なのよ、なにを考えているのよ

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