近未来拡張現実エンタメノベル『MIKOTO-The Perfect PROGRAM』

☆片想いバウチャー

☆片想いバウチャー(1)

2019年8月2日午後0時。
しまなみの天気は今日もぴーかんだ。抜けるような青だ。太陽とバトルしても勝てる気がしない。
こんな日は引きこもるのが正解であり俺的UVケア道だ。紫外線なにそれこわい。

俺はまいらの家の喫茶店カウンターでおなかを抑え、あの大粒の涙と、あの少し泣きそうな静かな微笑みを思い出して脳内で七転八倒していた。
そうだ、初めて出逢ったその女子に、俺は何度も貫かれたのだ。たかだか10分そこらの時間にだ。イメージ的には焼き鳥を連想して欲しい。

諸兄は時が止まるような体験をしたことがあるだろうか。それは多分おもに恋などにおいてだ。俺は過去にも何度かそれを経験した。
衝撃的に恋が始まった。時間が止まってしまった。非常に残念なことだ。

さて時を逆流して昨晩の夜、多々羅大橋。
パトカーが到着したのはあれから10分後のことだった。
まいらがヘリコフのスピーカーから状況を説明していた。自殺志願者の彼女は警察から厳重注意を受けたようだ。カミナリ声に肩がしょぼんとしていた。

とはいえあまり詳細な記憶がない。彼女のあの驚いた顔、大粒の涙、ほっとしたような笑顔しか覚えていない。俺はなんだか部分的にぴょんぴょん時間を飛び越えてしまったようだ。キングクリムゾン恐るべしだ。

彼女のハンドルはぽこ、と言ったか。
AIRというゲームに登場する神尾観鈴という少女のコスプレをしていた。
セーラー服かつ白いねこみみリボンという、清楚大好きヲタク男子的にどストレートなステレオタイプで奴は世界に登場した。
またしても一般人野いちごの皆様には謎の人物が登場してきたため、サンプル画像を掲載する。

http://key.visualarts.gr.jp/product/air/images/top.jpg

あの子は何度も何度もパトカーでの別れ際に俺のほうを見た。
どんな気持ちだったのかはわからない。だって話ひとつしていない。
俺はあたまがこんらんし、おなかのまんなかにドシンとした重くて心地よいものが発生し、軽い陶酔感と爽快感が生まれ、その感触は今もそのまま続いている。
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