甘い夏  煙草の匂い





― ガシャァン! ―


突然、目の前で起きた爆音に体が固まる。

社長がテーブルの脚を蹴ったのだ。



一瞬にして変わった空気の中、ソッと社長と視線を合わせてみる。

鋭く射抜かれるような目に、息が止まった…。



「鈴木様、失礼致します…いかがなさいましたか?」


何事かと思った店員が様子を見に来た。


「いや、すまない…。テーブルに足が当たっただけだよ。」

「左様でございましたか。お怪我はございませんか?」

「あぁ、悪かったな。壊れた物もないようだ。今日の支払いに迷惑料も足しておいてくれ。」

「とんでもございません。鈴木様のご様子を見に来ただけでございます。お邪魔を致しまして申し訳ございませんでした。」

「ふっ…オーナーに宜しく伝えてくれ。」

「かしこまりました。」



固まって動けないでいる自分が情けなく思いつつ、スムーズに会話している店員に軽く嫉妬した。





…俺…今、何を言おうとしてたんだ?





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