秘密な基地
少年との出会い
 どの位寝てしまったのか、
タケシは、すっかり
寝入ってしまっていました。

 「おい、起きてよっ、
 こんなところで寝ちゃって。」

父さん…、
ではなく子供の声でした。
その声にタケシは
起こされました。
目を開けると、
そこには丸刈りの男の子が
タケシの顔を覗いています。

「君は誰?」

タケシが眠気まなこに聞くと、

「それはこっちのセリフだよっ、
 人の秘密基地に
 勝手に入っておいてっ。」

その言葉に、
タケシもすかさず返しました。

「何言ってんの、
 ここは僕と父さんの
 秘密基地だよ。」

と言いつつ、
その男の子の顔を良く見ると、
おかしな事に気が付きました。

「君のそのおでこの傷…、
 どうしたの?」

男の子は、きょとんとしました。

「えっ、ああこれ、
 去年の夏、家の屋根下に
 出来た蜂の巣を
 落とそうとして、
 木に登ったんだよ。
 そこで突っついたら、
 蜂が追って来て、
 慌てて木から落ちて、
 地面に頭ぶつけちゃったんだよ、
 結局五箇所も
 刺されちゃったけどね。」

そのおでこには、
五センチほどの傷跡が
はっきりと残っています。
おかしな事とは、
タケシの父である
ノブオのおでこにも、
それとそっくりな傷跡が、
うっすら残っていた事です。
しかも、子供の頃、
屋根から落ちたと、
よく聞かされていました。
タケシは、
恐る恐る聞きました。
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