秘密な基地
秘密基地
 嫌な気持ちになった時、
逃げ出したい
気持ちになった時、
タケシが行く所は
決まっていました。
それは、裏山にある
小さな秘密基地です。
細い山道を歩き、
脇にそれ、
草むらを入っていくと、
子供が立って入れる位の
大きさの洞穴があるのです。
入ると、手持ちランプが
置いてあり、
真っ暗な穴の中を
照らせるようになっています。

 元々、ノブオが子供の頃、
この洞穴を見つけて
秘密基地にしました。
息子のノブオが
現在譲り受けた形に
なっていて、
この秘密基地を
知っているのは、
ノブオとタケシだけです。
ノブオが子供の頃
読んでいた漫画や、
おもちゃが置いてあるうえに、
丁度人一人が、
横になる事もできる程の大きさの、
細かい花柄の
刺繍のされている絨毯が
敷いているので、
くつろぐのに最適な場所でした。
その為、寝そべって
漫画を読んでいると、
つい、うとうとしてしまい、
寝てしまう事が
しばしばありました。

「こら、タケシ、
 またここで寝ちまったのか、
 しょうがない奴だなー。」

秘密基地で寝過ごした
タケシを父さんが
迎えに来てくれる事が
何度もありました。

「父さん…、会いたいよ。」

絨毯に寝そべると、
また涙が溢れてきました。
フェーン現象の影響で、
珍しく生暖かい風が、
洞穴の中のタケシを包み、
その風に誘われるように
眠気がおそい、
泣き疲れたせいもあり、
またもやこの絨毯の
上で寝てしまいました。
また父さんが起こしに
来てくれる。
心のどこかで、
そんな期待があったのです。
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