恋の唄
「いお、りちゃ……ごめん、何でも──」
「ホントにバカだよ、結衣は」
溜め息をひとつついて、私の背中を優しく撫でてくれる。
「拒絶出来る勇気があったなら、話しかける勇気も出るはずだよ」
「……え?」
涙を拭きながら伊織ちゃんに視線を向けると、伊織ちゃんは強い眼差しで微笑んでいた。
「聞いてみなよ。彼女と別れないままで、どうして結衣に気持ちを告げたのか、とかさ」
「でもそれは華原君の事情だし、話したくない事かもしれないから……」
「結衣を好きだって言ったなら、結衣には聞く権利があるでしょ」
「そ、そうだけど……」
話して、くれるのだろうか。
真柴君は知ってるみたいだったけど、その真柴君も『俺からは話せない』と言っていたのに。