恋の唄
「結衣、ぶつかってあげなよ」
「華原君に……?」
「そう。華原君は納得いってないはずだよ。結衣の気持ちにちゃんと気付いてるっぽいし」
だからこそ、私からぶつかる事も必要だと伊織ちゃんは言った。
そして、そこから何かが進むかもしれないとも。
悩んでしまった私。
暫らく無言でいると、突然背後から声がした。
「お前は本当に不器用だな」
驚いて振り向くと、そこにいたのは真柴君だった。
伊織ちゃんも私と同じく驚いて……ううん、私以上に驚いたのか、何度も瞬きを繰り返していた。
そんな私たちにおかまいなしに真柴君が喋り出す。
「えーっと、古賀、だったか? その子の言う通り、天音が動けば変わる」
言って、すぐに「いや」と続けた。
「動かせるのはお前だけだ」