恋の唄


聞いた俺は、ただ助けてやりたいって思った。

その時にはすでに一花を女として見ていたんだと思う。

だからあの言葉が出たんだ。


「俺が側にいてやるから、もう忘れろよ」


ボロボロに涙を流した一花を抱き締めた時、確かに愛しいっていう感情が心にあった。

それから卒業して、別々の高校に通うようになった頃、一花は彼氏と別れて俺と付き合う道を選んだ。

最初は、幸せだったんだ。
普通の恋愛をして、どこのカップルとも変わらない二人だったと思う。

──最初は。


時が経つにつれて、側にいない時間を一花が疑うようになった。

浮気してるんじゃないか、部活じゃなくて他の女と会ってるんじゃないか。


携帯なんてプライバシーゼロな状態で、会えば何かと疑う言葉を聞かされて。

そのうち、ケンカするようになって……


ついに、一花がリストカットを始めた。


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