恋の唄
翌日、学校で会った一花は頬の傷を隠そうともせず席に座ってた。
凛とした背中にタフな女だと思って近づいて、声をかけようとした俺の視界に飛び込んできた"白"。
左手首に、グルグルと巻かれたそれは嫌な想像をさせた。
俺の視線に気付いた一花は、雪の中で見せた悲しそうな笑みを浮かべて愛想笑いを俺に向けて手首を隠した。
隠されたら俺も聞けないし、気付かない振りして「彼氏とは仲直りしたのかよ」って声を掛けたけど……
本当は、二度とそんな事すんなって思った。
最初は同情心からだったかもしれない。
気になって、いつの間にか一花と一緒にいる時間が増えて……
卒業を間近にしたある日、一花の口から聞かされた。
付き合ってる彼氏がどうしようもない浮気性で、それでも好きでたまらないから苦しくて……
いつからか、苦しさを自分に向けるようになったんだと。
何か自分に落ち度があるんじゃないかと責めたりもしながら。