恋の唄


華原君と私は、あの日から比較的穏やかに過ごしている。

一花さんの話しは全くと言っていいほどしていないけど、不安はなかった。

華原君が私に向けてくれる笑顔に辛さが見えないから。

きっと真っ直ぐ、一花さんと向き合っているんだとわかるから。


華原君が私に近寄って来る。


「今から帰んの? 古賀は?」

「あ、えっと」


聞かれて一瞬迷った。
真柴君は何も言わずに黙ってるし、私が勝手に話すのもいけない気がして。


「用事があるみたいで」


それだけ言って終わらせた。


「じゃあ1人で帰んのか。……転ぶに100円」


いつもの調子で、意地悪そうなからかうような笑みで華原君が言う。

むくれてはしまうけど、本当は嫌いじゃないこのやり取りに、最後には思わず笑みを浮かべてしまった。

すると、華原君も優しい笑みを返してくれて。


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