恋の唄
「面白そうだけど今はやめておくね」
この前みたいにまた廊下に立たされたらたまらないもの。
それに、あの日以来先生には目をつけられてる。
今日は違う先生だからと言って油断は出来ない。
「そ? じゃあ結衣のケータイにゲーム取れるアドレス送ってやるな」
そう言った華原君はまたゲームに集中し始めた。
私は小さく頷くと、教科書に視線を落とす。
アドレスを送る、なんて言ってたけど……
華原君は私のメアドと番号を知らない。
だから送られてくる事はないのだ。
チクン、と心が痛む。
知らない事さえ頭にない。
華原君にとっての私の存在はきっと……
ただの”隣りの席の女”なんだ。