Chain〜切れない鎖〜
勇気を出した。
一馬が一緒だから、頑張れる気がした。
あたしを押さえつける男の手に、力の限り噛みついた。


「うわぁぁぁ!この女!」

あり得ないくらい情けない声で叫ぶ男。
そのみっともなさに勇気が出た。


男を振り払い、血だらけの一馬に歩み寄る。

「芽衣…」

一馬は傷ついた身体であたしをぎゅっと抱き締めてくれた。
温かくて、心地よくて、心が一気に満たされた。

あんなに傷ついた心を一瞬で満たしてくれる。
まるで魔法みたいだ。

大好きな一馬の香りに混ざって、血の匂いがした。




「もう大丈夫」

そう優しい目であたしを見て、再び不良たちを見る一馬。
その瞳には明らかに怒りの炎が燃えていた。

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