Chain〜切れない鎖〜
しかし、あたしが思っているよりも、事態は深刻だったのだ。


教室へ入ったあたしたちを迎えたのは、青ざめた顔の華だった。
いつものように鉢巻きにスウェット姿だが、いつもの元気が少しも感じられなかった。

教室の空気も何だかおかしい。
みんな困った顔をしていた。





「どうしたの?」とあたしが聞く前に、華が走り寄る。
その体は小さくブルブルと震えていた。


「あの人たちが…
桜井君が…」

「ふざけるなよ、華」

隼人が空気の読めない言葉を発する。

どう見ても、華がふざけているようには見えない。
あたしがあいつらに会った時のように、恐怖にすくみ上がっているようだった。


「屋上…」

華の顔色は蒼白で、それだけ言うのがやっとだった。
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