Chain〜切れない鎖〜
クラスの熱気は最高潮に達していた。




茹で上がるパスタの水を素早く切る。
希望に合わせたソースと絡める。

いつの間にか行列が出来、華は勝ち誇ったように高笑いしていた。




絶好調。


絶好調のはずだった。







「桜井君は?」

ふと、手が空いたすきに華が聞く。
確かに一馬の姿がない。


「バンドじゃない?」

そう答えたが、すぐ近くで女の子に声をかけている隼人がいた。

さすが隼人。
隼人の周りには可愛い女の子の人だかりが出来ていた。


まだ早い。
まだ演奏までに時間がある。

いやな予感がした。



「またサボってるんじゃない?」

そう答えたのが最後。
華の怒りに火をつけることになった。





華は熱くなると周りが見えなくなる。
それはいいことだけど、時に禍となる。

一馬を探すために教室を飛び出した華を追って、あたしも急いで駆け出した。

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