鏡の中のアタシ。
偽っている事に罪悪感がないわけではない。

ただ、浮気をするわけでも、同時進行するわけでもない。

そっちの方がひどい。

アタシの方がマシだ。


そうやって誤魔化していた。


トントン…

「里菜チャンだよね?」
突然後ろから肩を叩かれ声をかけられた。

里菜がきょとんとしていると、
「あぁ!ごめんごめん。雄也の友達!覚えてない?」と顔の前で手を合わせながら聞いてきたので、気付かれないように一呼吸おき、“清純派里菜”を用意して「…たしか、大地君だったよね?覚えてます♪覚えていてくれてありがとう。」と、微笑んだ。
大地は、安心したようで、手を下ろし
「忘れるわけないじゃん!里菜チャンは、有名人だからね☆最近雄也にかわいい彼女ができたって♪」
と、ひと昔前のマンガなら間違いなくウインクするだろう顔で里菜に笑いかけた。
「かっ…彼女じゃありませんよぉ、アタシなんか雄也クンの彼女にふさわしくないよぉ。」
と、少し悲しそうな顔をしながら慌てて否定する。

もちろんそんな事思っていない。
雄也の理想通りにしているんだ。
雄也が好きになるのも時間の問題だった。
友達にからかわれてはずかしがる。
これも、リサーチした雄也の理想像の一部だ。

いくら最近悩んでいると言っても、すぐに止められるわけではない。

身に付いてしまった習慣とは怖いものだ。
すぐに今のキャラになってしまう。


「里菜チャン、彼女じゃないの?俺、てっきりそうだと思ってたよぉ!ま、時間の問題だろうけど☆俺的には、雄也は絶対里菜チャンに気があると思うんだよね〜!だから、里菜チャン自信もちなねっ♪♪」

大地は、少し落ち込んだ様子の里菜の顔をのぞきこみ、そう言って笑いかけると
「俺、この後女の子と待ち合わせしてるんだぁ〜♪」と上機嫌で駆けていった。
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