鏡の中のアタシ。

あんなにあった時間も、ゆっくりしすぎた事や、大地の登場で、あと20分までせまっていた。

少し歩く速度を早めて、待ち合わせの公園内に入っていく。


公園内には、散歩中の親子や、カップルがちらほらいて、ベンチは空いていない。
里菜の目に、喫煙所がうつったが、雄也にみられるわけにはいかない。
そのまま歩き、噴水のそばに腰をかけて雄也を待つ事にした。

「あ…」
「おはよう!」

噴水のそばにはすでに着いていた雄也が腰掛けていた。
「落ち着かなくて、早く来ちゃった☆」
雄也は、恥ずかしそうに里菜に笑いかける。
「私も同じだよ♪」
そう笑顔で答えたが、里菜の心境は、浮かなかった。
それを悟られないように、
「行こっか♪」
里菜は、先に足を進めた。

「お腹すいてない?先に映画にいく??」

映画を見てから、ご飯を食べることにした里菜達は、映画館に向かう。

「雄也クンって優しいね」
「え!?どぉしたのイキナリ…」
「ふふっ、なんでもない」
「え〜?」
そんな話をしながら歩く2人は、幸せそうに見えるだろう。
現に雄也は、今にも鼻歌でも唄いそうな程、上機嫌だ。

〈雄也クンって優しいね〉
その言葉は、嘘ではない。
ただ里菜は、雄也が優しければ優しいほど、雄也は“清純派里菜”だから優しいんだ。
と思ってしまう。
もちろん、自分のせいだ。
でもそれが苦しかった。

大地の言葉も頭の中でぐるぐるしていた。
〈時間の問題だろう〉
〈雄也は里菜チャンが好き〉

この里菜だから好きになった…
わかってるよ、最初からそのつもりじゃん…
いつも通り上手くやろうよ…
悩む必要なんかないよ…

無理矢理自分を納得させる。


「…ャンっ?里菜チャン?」
雄也が心配そうに覗き込んでいた。
「えっ!?あ…ごめんなさい」
慌てて謝る。
里菜は考えすぎていて、雄也の声が聞こえていなかった。
「大丈夫?体調悪い?」
「全然大丈夫、ごめんね!なに観よっか?!」
これ以上雄也に気を使わせるわけにはいかない、と里菜は気丈に振る舞った。

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