鏡の中のアタシ。
「お疲れ様でした〜」
里菜は、バイト先のガソリンスタンドに来ていた。

清純派なんてとんでもない。
デニムスにパーカーで、髪を後ろに一つにまとめて、眉を書いただけのすっぴん。
里菜は本当は、化粧さえ面倒臭い子だった。

ガソリンスタンド横の自動販売機で、いつものコーヒーを買って、タバコに火を点ける。

バイト終わりのちょっとした楽しみだった。


「あっ!ゆうっー……」
たまたま雄也が通りの反対側を友人と歩いてるのを見かけて、声をかけそうになったが、里菜はそのまま座りなおした。
今日は、「雄也の為の里菜」ではないからだ。

「ははっ、なにやってんだろ…」
苦い笑いを浮かべながら里菜は、タバコを消してコーヒーを飲み干した。

いつものほっとするコーヒーも、苦さがいつまでも残っていた。


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