MeLdy~メロディー~

「いつも
 ココにいるね。」

『ココが、アタシの
 定位置なの。』

知り合いに
見つかりたくなくて

ただの趣味として
1人で楽しむために
見つけた、
お気に入りの場所。

所有権のないココを
“定位置”と呼んだ
自分が気恥ずかしくて

照れ隠しに
ギターの弦を軽く
指で弾けば
低い音が響いた。

ただ不思議と
その言葉は素直に
アタシの口から
零れてた。

「そっか。」

『他にはない?
 弾いて欲しい曲。』

ギターを構え直す
アタシ。

そろそろ時計が
帰る時間を
示し始めてるから
コレが今日最後の曲だ。

「ならもぅ1度、
 同じ曲を
 お願いしたいな。」

『はい。』

リクエストは
さっきと同じ曲。

相当、好きみたい。

「―ありがとう。」

曲が終われば
彼はそぅ言って
一言二言の会話ののち
帰って行った。

不思議な人だ。

あ、名前聞くの忘れた。

…ま、いっか、

また会えたら
その時聞けば良い。

そぅ思いながら
ギターを担ぎ込み

彼が帰って行った
反対方向へと
歩き出した。

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