地味なあたしと不良軍団

「恵美ちゃん」
薫が彼女を呼んだ。

はっとなり顔をあげれば、彼はにっこりと笑う。

「泣きそうな顔してるで。」

自覚が無かった。
なんだろう、胸の奥が可笑しいのだ。

「どうしたんだよ?」

走りながらも恵美を気にしてくれる奏は優しいと思った。

「…なんでもないわ。」
早く、依奈を連れ戻して大地を殴ってやらなければ。

自分にははいる余地はないのだ。

「そこの廊下を左で、一番奥が大地の部屋よ」

悠真は走らず、自分のペースで歩いている。
秋が急かすが、あわせる気はないらしい。


悠真先輩!助ける気あんの!?」
「ないな。」

アイツなら大丈夫だ。

どこからそんな確信がくるのかわからない。
悠真は笑う。

「ここだな?」
「そうよ」

恵美が頷く。
奏が迷うことなく部屋の扉を開ければ、目当ての人物が椅子に座り、寂しそうに窓の外を見ていた。
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