地味なあたしと不良軍団
「楽しみにしとる」
薫は部屋を出る際に恵美に指輪を投げた。
慌ててそれをキャッチする。
「あげる」
「…え?」
「使わへんもん」
卑怯だと思った。
嬉しすぎて、顔が赤くなる。どうして自分はこんなにも分かりやすいのだろう。
ただ、悔やんだ。
「卑怯よ…」
薫は聞こえないふりして部屋を出た。
「…」
彼は携帯のアドレス帳を開いた。
幾多 依奈。
【今から会える?】
カチカチとメールをうち、送信した。
自分の予想では、依奈は俺に惚れている。
でも、自分から告白してしまうのは面白くない。
言わせたい。
薫は秋の家へと向かった。
*
「あ、メールだ」
美紅と食器を洗っていると携帯が震えた。
薫からのメールに、一瞬だけ心臓が高鳴った。
しかし、前のようにドキドキはしない。
「…依奈お姉ちゃん?」
「…どうしよう」