地下
「どうします?このまま真っ直ぐ進みますか?」


「そうね、下手に方向転換して迷いたくはないものね」


私以外と方向音痴なのよ、と付け加えると紗絵子は愛華に微笑んだ。


まだ、笑って人と言葉を交わすことはできる。


一人じゃない。


それがどんなに自分にとって力強いことか。


学校と言う場は夜は物凄く不気味でそれだけでも怖い。


それなのに異世界に踏み込んだかのようなこの場所で、非現実的なことが起こって何とも思わないことの方が可笑しいのかもしれない。


何故まだ冷静でいられるのか、こうして考える自分がいるのか。


もしかしたら、そう簡単に人間は現実を受け止めるなんて出来ないのだろう。


私はこれは夢なのだとどこかで思っている、いや願っているんだ。
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