桃太郎【Gulen】
「俺たちの国は、もうすぐ田植えの季節に入る。出雲になど行けば、一月は帰って来れぬ。そう安々と兵は出せん。」
我ながら苦しいいい訳だな・・・。
もっとマシな言葉は選べなかったものか。
「それは、わらわの国とて同じこと。それに、大和の武士が出雲の鬼によって惨敗したことの噂、こちらに届かないと思わないでか?」
やはり、届いていたか。
「だからこそ、俺がわざわざ赴くことになった。」
「スサノオウの6男坊ごときが、大方、体よく捨てられただけだろう。そんな身分もない男に、わらわの貴重な下僕を預けるほど、愚かではないわ!」
「グッ・・・」
言わせておけば・・・。
仮にも神の血を引くこのヤマトタケルを前に、そのような言葉を吐くとは・・・。
「面白い話ではないですか?」
このまま、輝夜姫に赴いたことが、無駄足になろうかとしたところで、姫の後ろから透き通るような声が聞こえた。