桃太郎【Gulen】

「なんと禍々しい・・・。」


 乙姫が扇子を構え、顔をしかめる。


「名に恥ずべきことを承知しておりますが、私はあまり妖術には精通しておりません。ですが、この者のもつ怪しい気配は感じ取れます。」


 悟空も如意棒を構える。


「怪しいとか、禍々しいとか良く分からないが、勝負するなら相手になるぜ!」


 金太郎も鉞を振り上げた。


「お前の父は言うだろう。『鬼などこの世にはいない』・・・と。」


「申しておりました。私もあなた様を見るまでは、そう考えておりました。悲しきことです。」


 ヤマタノオロチ・・・生きているのならば、一度きちんと挨拶をして見たいと思うておりました。


 このような形でしか会えぬこと、とても悲しく思います。


 桃太郎は神剣を構える。


 いざ尋常に勝負。


 父の怨念、この桃太郎が一心に受け止めようぞ!


 ヤマタノオロチは剣を抜く。


 そして、背後から再び現れる八つの蛇の首。


「やったんじゃなかったのか?」


 金太郎が叫ぶが・・・。


「アレは、マヤカシです。お気づきにならなかったのですか?」


 乙姫、あまりいじめるな。


 金太郎は力はあるが、頭は弱いのだ。


「なんにせよ、我々にも相手を用意してくれるとは、ありがたい話です。ここまで来て、主たちの真剣勝負を眺めているだけでは、退屈ですからね。」


 悟空は如意棒を構え、にやりと笑った。


「そなたの未練、この桃太郎と、イヌ、サル、キジが、必ずや退治して見せようぞ!」


「スサノオウのガキが吼えるか!」


 いざ、尋常に勝負。


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