桃太郎【Gulen】


「仙人様のお言葉です『釣りは、待つだけではダメだ。しかし、時にはただ、じっと待つことも必要だ』と。時が全てを解決してくれるときが来ます。オロチ様。ここは、身をお潜めください。」


 乙姫が後ろから、顔を隠しつつ、口にした。


「・・・・・・・そうだな。その通りだ。俺の住むところには、必ずといっていいほど、災いが起きた。里は病で滅び、国は飢饉に襲われ、この地では鬼とされた。・・・なんとも不憫な人生よ。」


 それを、あなたは悔いていたのだ。


 その未練が、あなたを鬼にまで陥れたのだ。


 器が小さいわけではない。


 あなたは・・・ただ、時を待てなかったのだ。


 それだけ・・・それだけの話なのだ。


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