桃太郎【Gulen】


「それも、時が解決してくれます。父を助けてくれたこと、スサノオウに変わり、愚息、ヤマトタケルが変わって、お礼を申し上げます。」


 桃太郎は、オロチに向かって深々と頭を下げた。


「ただの気まぐれよ。スサノオウにあったら、コレを渡しておいてくれ。そして、こう伝えるがいい。『俺のところに来るときは、良い酒を美味い魚をもってこい』・・・と。」


「はい、必ず。」


 オロチは、桃太郎に向けて釣竿を投げつける。


 至上の宝。オロチの形見。


 そして、ヤマタノオロチは、森の中へと姿を消す。


 その瞬間、ヤマトタケル・・・桃太郎は、父の命を果たしたのだと、理解した。


「さぁ、帰るぞ。皆の衆!」


 桃太郎は、踵を返す。


 鬼が消えたことを、出雲に大和に、京に浦島仙人に報告せねばならぬ。


 空を見た。


 雲ひとつない良い天気だった。


 帰ったら、種まきは終わっているだろう。


 そしたら、草むしりをしなければならない。


 良い季節が今年も始まろうとしていた。




< 57 / 59 >

この作品をシェア

pagetop