かえりみち
「卓也?!」
遠くから自分を呼ぶ声に、卓也ははっとした。
長い廊下の先に、由紀子が立っていた。
「・・・」
卓也を見つけた由紀子はそのまま、身動きせずにこちらを見ている。
何かの感情が込みあがってくるのを、抑えているようにも見えた。
突然、由紀子が卓也に向かって走り出した。
「?」
卓也は状況をつかめず、その場に立っているしかなかった。
一瞬のことだった。
走ってきた由紀子は、卓也の一歩手前で止まると、卓也の顔を確かめるように見た。
そして-
卓也の頬を、思いっきりひっぱたいた。